ももいろクローバー軌跡考その3「無限の愛」ー℃-uteと芸人

2012年2月シングル「猛烈宇宙交響曲 無限の愛」


ももクロ PV 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」 - YouTube

電波ソングの話をするときによう引き合いに出す曲。この曲自体は電波ソングってわけでもないが、作り方の哲学はアイドル電波ソングのものだ。

次々とツギハギして音楽を変えていく、プログレッシブな曲。ツギハギ部分が不自然な程、曲にスピード感と盛り上がりが出てくる。

アイドル電波系ソングは曲自体で現場に盛り上がりを与える。昔のハロプロにあった、本来盛り上がらない曲で、コールで無理矢理に盛り上がるという、ハロヲタ専の「盛り上がり」とは違う、音楽ファンが盛り上がって、自然にコールやフリを入れられるタイプのアイドルソングだ。

何度も書くが、盛り上がらない可愛らしいメロディ、もしくはひたすら陰鬱なメロディに豪華歌謡のアレンジな曲、またボーカルが先にでて、インストがあとからなんとなくついてくる、ライブ感のないカラオケ音楽、これに強引にコールを入れる、この3つの組み合わせが、(文字通りの意味で)声のでかい特殊なヲタ専音楽になり、それ以外のファンを決定的に現場から遠ざけた原因だ。

℃-ute4つ打ちダンス音楽と、アッパー成分の多い編曲、というダンバコ以来の℃-ute路線で、これは音楽ファンやライブファンが普通に盛り上がれる曲であり、自然にコールやフリが入れやすい。そのため特殊なヲタ以外のファンも現場に入ることができて、客層が広がった。

さらに最近はインストが先に音圧をもって衝撃を与え、その後、隙間から歌声をインストを乗り越えて到達させるという、ライブ感のある音のつくり方になってきた。ようやくハロプロカラオケライブが終焉し、きちっとしたライブ感のあるライブになり、これでアイドル以外のライブへ行くような客層に到達する音楽になった。

 

さて無限の愛であるが、このシングル発売の2月の前の1月に、ももクロの人気が急上昇を始める。おそらく、ももクロ七番勝負というイベントのあたりだ。

芸人との絡みで、ももクロちゃんのかわいさが、うまくアピールできた結果ではないかと思うし、また絡んだ結果を芸人がラジオで語り、外からの目線で、わかりやすく何が魅力かを伝えてくれた、またそのフォーマットができた、から、という現象に、自分は注目している。ヲタや陣営からの情報でなくて、芸人が外へ通じるような言葉に直してくれて、さらにそのフォーマットを元に、ヲタがネットで拡散できる状況が整った、という事だろう。またテレビも、これでフォーマットを扱えるようになった。

℃-uteが現在その段階に到達してきており、自分はダイノジ大谷や日村さんとのコラボを楽しく見たり聴いたりしている。

宇多丸につぐ楽曲派評論家、ダイノジ大谷のteam℃-ute加入は、一騎当千であり、℃-uteちゃんのかわいさや面白さをうまく引き出してくれた上に、アイドル的魅力を外からの視点で伝えてくれるだろう。

またファンに成りたてなので、色々質問する事が面白く、またけっこうきわどい事も聞いてくれるので、ファンが聞いていても、新鮮で面白い。

さっそく「下北沢」で℃-uteの魅力を伝える芸人イベントなどもやってくれて、とても良いペースで新しい層への到達を試みている。

 

というあたりの時期の曲が「無限の愛」であり、このあと、ももクロはライブの箱が大きくなっていく状況や、客層が広がるという状況をつくりだすために、こういう路線の曲は、ここで終了する、という事が、ももクロの軌跡だ。

ホールコンなら2階席で見るような客に到達するようなライブにする必要があり、2階をどれだけ満足させたか、がより大箱へ進むために大切だ

1階の前でみたいようなファンを相手にするべきではない。1階の前のファンに合わせていると急速にライブハウスへ、さらには300人規模のライブハウスへ、とファン層が縮まってしまう。

という事で、箱の大きさによって、曲やパフォーマンス、ヲタのコールのあり方が問われていくことになる。コールだけだとホールコン1階とライブハウスの客の盛り上がりになってしまうので、それ以外の要素をどんどん多くしていき、コールは少し減らしていかないといけない。

そういう過渡期のシングルが、無限の愛だ