ももクロ軌跡考その1ー「Z女戦争」と℃-uteの見えない敵設定

2012年6月シングル「Z女戦争」


ももいろクローバーZ「Z女戦争」MV - YouTube

個人的には好きな曲なのだが、単に作曲のやくしまるえつこが好きなだけかもしれない。

ももクロのMVは長いこと、常に見えない敵と戦い続けているのだが、この曲もそうだ。この『見えない敵と戦う』という設定は℃-uteに受け継がれており、これが℃-uteの若年世代の人気が上昇している理由の一つはずだ。

℃-uteの場合はMVだけでなく、各種イベントや雑誌の広報記事やライブのMCやスキャンダル攻撃などで、常に見えない敵、もしくは実際の敵を作り上げ、あおり続ける事により、団結と熱狂を作り出しており、アメリカの政治家のごとくだ

例えば普通のアイドル陣営にとっては、スキャンダルは確実にスキャンダルなのだが、team℃-uteにとっては「どこかの敵対陣営の攻撃」と認識され、例のペンタグラムの儀式、一人かけたら℃-uteは解散、5人で℃-uteが、team℃-uteで執り行われる。

 

というのが、ももクロ「乙女戦争」の歌詞の世界観だ。

Youtubeの概要から引用

ティカ・αこと、やくしまるえつこが手がけた今回の楽曲『Z女戦争』、その世界観は、­やくしまる曰く「私たち、この戦いが終わったら、みんなで合唱コンクールするんだ」

引用終わり

 

2012年ももクロの手法を℃-ute陣営は取り入れ、系統的にイベントを起こすことによって、アニメ(セーラームーンとか)だけの世界だった、見えない敵と戦うアイドルという設定に、ファンが参加する事が可能になった。

娘。とAKBは、特にAKBだが、戦い傷つき潰され壊れていく少女を『見守る』私たち、という世界観だったヲタク的世界感のアイドルに対して、『常勝軍』として勝ち続けるアイドル「ももクロ」という軸反転が行われたが、さらに℃-uteは逆転し続けるアイドルを設定し、team℃-uteとして、『常勝軍』にファンが参加できる設定となっている。

 

ここら辺は逆境に陥る事、握手会や、ペンタグラムの儀式(1人かけたら解散、5人で℃-ute)などを担保にして、ファン参加型を作り上げたようだ。

 

℃-uteの場合、逆転劇というのがファンが参加しやすい構図になっており、逆境に陥った℃-uteちゃんをファンが支えて、そこからの勝利!という構図が作れる。

この逆転劇を繰り返すことにより、℃-uteの物語は作られており、そこにファン参加体験型のストーリーがある。

武道館後、普通にやったら「常勝軍」になってしまいそうなところ、また上手く「逆境」を作り上げた℃-ute陣営は老獪であろう。

 

℃-uteが広い層に響きだしているのは、この「逆転劇」という世界観をファンが一緒に体験できる事であり、同じ時間を一緒に生きることによって、強いシンクロニシティがあり、「歌詞」がよく心に入ってくるのだ。逆転劇を一緒に体験したファンは、ライブにおいて、「歌詞」を聞くことによって、本当の歌を聴くことになる。文字だけみると陳腐な歌詞は、一緒に体験したことによって、感動する歌詞になる。

ここら辺が、歌に関する魔法だ。

 

ももクロもこれに近い構図をもっていた。(というか℃-uteが真似した)

 

乙女戦争のコレオグラフィーは、見えない敵と戦うアイドルをかわいく見せていて、よくできていると思う。このくらいの「ゆるい」ダンスを℃-uteも取り入れて欲しいと思うのだ。ちょっとした動きの中にも、むしろこういうダンスにこそ、℃-uteのアイドルダンスの技量は強く反映されるハズだ。

リズムのタイミングから、いわゆるダンス系のダンスにはならないハズの℃-uteなので、純粋にダンス的な動きをしようとすると、技術がよくわからない、という結果を招きやすい。それをどうクリアして、ダンスの技術を曲芸的に表現するか、というのが、克服しないといけない問題でもあり、まあ「斬新」的なダンスも一つの考え方だろう。