℃-ute「都会の一人暮らし」分析

編曲者は鈴木俊介℃-uteシングルでは他にダンスでバコーン、Forever loveを作曲していて、おそらく相性の良いアレンジャーだ。

曲のタイプ的には、劇伴系の音楽だと思う。ドラマやアニメやゲームのバックの音楽だ。シチュエーションダンスの℃-uteには、相性が良いのではなかろうか?

いままで、歌曲に「フリ」をつける、という考え方でのダンスで、それをシチュエーションダンスにしていたのだが、歌曲である事をやめて、シチュエーションのBGMとしての劇伴系音楽に歌をつけてみたら、という考え方だ。

ミュージカル音楽もそういう傾向があって、Aメロは伝統的なミュージカル系の曲にたいへん近い(から自分の好みだ)。

Bメロやサビメロもミュージカル系から遠くないと思うし、そういう古い時代のミュージカルのメロディ、たとえばリチャード・ロジャース的な、ものを感じ、女の子のかわいらしさを、軽やかなメロディでうまく表現している。

つんくちゃん的な、陰湿でねばりと湿度のあるメロディとは正反対の、軽やかで湿度が少ないメロディだ。

イントロは、いくつかの短いパートをつなぎ合わせておりプログレッシブ、その全てにおいて、勢い重視で、スピード感があり、常にテンションを高く保つようにできていて、編曲技術の高さがある。

歌中も、けっしてスピード感とテンションを失わないように、細かい工夫がなされている。特におかしな音色の組み合わせもなく、基本的。ギターのカッティングがきちっと聞こえている。

コード進行はおしゃれでテクニカル。

と、曲の技術に対しては特に減点される部分はなく、楽曲技術レベルが高い。また各部分が垢抜けていて、℃-ute陣営は外部から音楽スタッフ引き抜いたのではないか?と疑う出来だ。

MVが垢抜けたと思う人は多いだろう。楽曲の細かい部分を検討すると、楽曲の設計図も大変に垢抜けているのだ。

 

この曲がA面シングルという事は、℃-uteが順調にたくさんのタイプの客層を増やしている、と℃陣営が判断しているという事だろう。

このタイプの曲がシングルになる事で、つんくちゃん曲大好き層、子供楽曲好きな層、という従来ハロヲタにいたような層がそれなりに落ちるだろう。要は、落ちても大丈夫、という判断があるからの、「都会の一人暮らし」だ。

 

もう片方の曲「愛ってもっと斬新」はまだ細かく調べてないが、ちょっとコピーしたところでは、メロもコードもつんくちゃん色が強く、歌詞もつんくちゃん漢文の歌詞で、これは、つんくちゃんが作った曲だと推測できる曲だ。

しかし、こちらの曲も、劇伴系の曲で、戦闘シーンによさそうな、アレンジフレージング、音色が組み合わせてあり、廃墟で軍服というシチュエーションのBGMにたいへん似合った曲となっており、こちらも歌曲ではない。

シチュエーションダンスという℃-uteちゃんのダンスに似合った曲だろう。

 

今回シングルは劇伴音楽を聞く耳があるかどうか、そこらへんがけっこう大きいと思う。歌的な曲のつもりで聞くと、たぶんツボには入らない。劇伴音楽を楽しむツボを育成しているか。

これまでにないくらい、℃-uteちゃんをドラマの主人公にして、つまり℃-uteちゃん自身を主人公にして、そのバックに曲がある、という形式になった。

℃-uteちゃん、℃-uteの紡ぐストーリー、℃-uteのドラマ、これに付随するのが、アイドル曲とダンスだ。曲もダンスも主役ではない。℃-uteを引き立てる演出の一つであろう。

(都会の一人暮らしを聞きながら、℃-uteちゃんが一人暮らししたらとか、大学行ったらとか、色々と妄想してストーリーを紡ぐのが、オススメの聞き方なんだと思うし、そういう風にプロモーションが行われている。ダイノジ大谷はベーグルの曲で、舞美ちゃんとの同棲を妄想した、というていになってるし、このようにアイドルで妄想ストーリーを作り上げるタイプのヲタ、へのサービスを強く意識した曲になっている。当然、アイドルを好む層には、妄想ストーリーやカップリングなど、そういう想像系ヲタがけっこういるので、この層に対応している)

 

作曲者>歌>℃-ute的な不等号が、これまでのハロプロだったが、このシングルでようやく、℃-ute>歌>作曲者、となっただろう。

 

自分はこの「都会の一人暮らし」がこれまでの℃-ute曲になりくらい気に入っている。最近はすっかりアダムとイブが好きだったが、これに並ぶ、または上回る好きな曲だ。

今現在の℃-uteのお気に入り曲は「都会の一人暮らし」「誘惑の休日」「たどり着いた女戦士」「日曜日は大好きよ」「アダムとイブのジレンマ」「悲しき雨降り」「あったかい腕で包んで」「Crazy 完全な大人」あたり。

今年の℃-ute曲が、圧倒的に自分の好み。

楽曲の技術レベルがどんどん上昇し、さらにセンスが垢抜けてきた。ハロプロ以外の歌謡曲が好きな人の耳に届くような曲になっているし、大変に攻めてる曲が多いので、調子の良いアイドルらしい。

メジャー化のために、これまでの音楽のコアは変えずに、多くの層に対応するようになってきた。ホールコン1階の前方を好むような、あばれたり、レス厨だったりする、地下ドル傾向のヲタだけに焦点を合わせた曲から、色々な楽しみ方をする多くの層を納得させる曲に変化してきている。